ここ数年で、従来の1コマ90分15回授業を行っていたところ、1コマ100分14回授業に変更している大学が増えてきています。
大学職員として、その理由はいくつか想像はつきますが、この背景や各大学の変更理由等について、今回はまとめます。
100分14回授業は設置基準上問題ない?
大学設置基準上では、平成25年度に改正がされ、下記のような条文となっています。(各授業科目の授業期間)
第二十三条 各授業科目の授業は、十週又は十五週にわたる期間を単位として行うものとする。ただし、教育上必要があり、かつ、十分な教育効果をあげることができると認められる場合は、この限りでない。
大学設置基準及び短期大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について(通知):文部科学省
その以前は、但し書きの部分が、「ただし、教育上特別の必要があると認められる場合は、これらの期間より短い特定の期間において授業を行うことができる。」と規定されていました。
この改正に伴い、下記の条件を満たしていれば、10週・15週にとらわれず、期間設定が可能であると解すことができます。
・教育上必要があり、十分な教育効果をあげることができる
・15時間から30時間の範囲の授業をもって1単位とする計算を逸脱しない
・学則変更の届出を行うこと
単位時間の考え方については、下記記事もご参照ください。
1単位=45時間の学修の考え方
100分授業各大学理由
授業時間に関しては、90分×15回=1,350分と、100分×14回=1,400分とを比較しても、十分に確保できているとみてよいでしょう。では、「教育上必要があり、十分な教育効果をあげることができる」という部分については、各大学ではどのように理由付けをしているのでしょうか。
100分14回授業に変更した大学の変更年度、変更理由(抜粋)について一覧にしてみました。
明治大学(2017年度~)
2017年度からの本学授業時間割の変更について(お知らせ)理由:
従前と同じ総授業時間を確保しつつ,ゆとりをもった学年暦を作り上げるとともに,従来の授業方法だけではない多様な魅力ある授業を展開し,一層の教育効果を高める
芝浦工業大学(2017年度~)
授業時間割の変更のお知らせ(2017年4月開始)理由:
ゆとりをもった学年暦にするとともに、学生参加型の魅力ある授業を展開し教育効果を高める
神奈川大学(2018年度~)
2018年度 100分授業に伴う変更について理由:
15週授業では学生の主体的な活動にも支障を来し、教育効果を高めることが期待できないものと判断
法政大学(2018年度~)
2018年度からの授業時間割・学年暦の改定について理由:
単位を実質化するための授業時間数の確保・学生のモビリティ推進を可能とする学年暦の実現・休祝日の授業実施解消・柔軟な授業展開を可能とする学年暦の実現
東京電機大学(2018年度~)
2018年度からの授業時間割の変更と統一について理由:
祝日授業実施や授業期間延長の改善・学生が主体的に参画でき、協働して学修できる授業の一層の展開・キャンパス間の時間割統一・将来的な柔軟性のある学年歴への展望
日本獣医生命科学大学(2018年度~)
本学授業時間(100分授業へ)の変更について | 日本獣医生命科学大学理由:
これまでの総授業時間を確保しつつ、能動的学修への取り組みにより教育効果を高めるとともに、ゆとりある学年歴とする
京都外国語大学(2018年度~)
2018年度から授業時間を100分に変更します|京都外国語大学・京都外国語短期大学理由:
授業日数、定期試験及び補講の期間を確保し、学生が長期休暇中の学外学修等にも積極的に参加できるよう
大阪工業大学(2018年度~)
2018年度からの授業時間および授業期間の変更について(お知らせ) | ニュース | 大阪工業大学理由:
15週授業では休日授業の実施、夏期休業期間等の短縮を伴う過密な学事日程が不可避な状態であり、プロジェクト活動や海外留学に十分な時間がとれない、長期インターンシップに参加しづらいといった、学生の主体的な授業期間外活動を妨げる結果となるため
立教大学(2019年度~)
2019年度より授業時間を1回100分に変更 | 立教大学理由:
教員による柔軟な授業展開を可能とし、アクティブ・ラーニングやサービスラーニング等の手法を用いた多様で魅力的な授業をより一層拡充して学生の興味関心と学びの主体性を高める・海外留学やボランティア活動、正課外活動等の機会の確保
上智大学(2019年度~)
2019年度からの学期区分と授業時間割の変更について | ニュース | 上智大学 Sophia University理由:
単位修得に必要な授業時間の基準を満たしながら、短期留学やボランティア活動等に活用できる夏期・春期休暇の期間の確保
獨協大学(2019年度~)※2018/11追加
獨協大学理由:
学生の学修時間が確保され、現状よりも自由度が高く多様な形態の授業を実施することが可能となる
中央大学(2019年度~)※2018/11追加
【重要なお知らせ】2019年度からの本学授業時間割の変更について | 中央大学理由:
・1時限あたりの授業時間を10分延長し、座学の形態にとらわれない多様な授業方法を導入し、学生の主体的な学びや学生同士の議論に要する時間を確保する。
・授業実施期間を1週短縮し、休業期間におけるインターンシップや留学等の学外活動機会を確保する。
・これまで個別に運用していた多摩・後楽園の両キャンパス間における時間割の共通化により可能となる、遠隔教育コンテンツの充実。
日本女子大学(2019年度~)※2018/11追加
2019年度 100分授業時間の導入について | 日本女子大学理由:
学生の主体的な学びを促進できる授業(アクティブ・ラーニング)のさらなる推進、また、学事日程の弾力的な設定により、諸外国との学生や教員との交流(海外短期研修等)、国外企業へのインターンシップの参加が可能になる
桜美林大学(2019年度~)※2018/11追加
2019年度からの授業時間帯・学事暦の改定について | 桜美林大学理由:
講義型の授業は残しつつも、学生が主体的に授業に参加できる仕組みを整えていきます。100分授業の導入によって、その時間枠の中で区切りをつけることで、講義や演習、討論やプレゼンテーションなど、複数の学修活動を組み合わせることができるようになります。
また、授業期間を14週間とすることにより、授業期間以外における活動の選択の幅が拡充されるので、海外留学、フィールドワーク、クラブ活動、夏季や冬季の特別プログラム、インターンシップ等に積極的に参加できるようになります。
東京家政大学(2019年度~)※2018/11追加
お知らせ一覧理由:
①従来の授業方法のみならず、多様な魅力ある授業方法を展開し、教育の質向上を図ることを目的として,授業時間の10分間延長を決定しました。
②柔軟な授業設計や短期集中型の授業形態とすることで、一つ一つの授業に対して掘り下げた探求ができ、教育効果の向上を図ります。
③アクティブラーニング(学生の主体的・協働的な学びを促進できる授業)を推進し、学生の認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図ります。
④留学やインターンシップ、ボランティア等正課外活動の時間を現在より確保することで、より充実した学生生活が送れるよう、ゆとりをもった学年暦を実現します。
ハッピーマンデー対策
変更理由として、いくつかの大学で挙げられている「祝日授業実施」ですが、近年ではハッピーマンデーの政策によって月曜日に祝日が増えています。祝日は授業を行わないのが通常ではありますが、15週確保のためにはどうしても祝日の月曜日に授業を実施せざるを得ない状況となっています。
「月曜日分を別の曜日に行えばいいじゃん」という意見もありますが、平成28年度の私大協の実態調査では、48%の大学が祝日でも授業を実施しており、次いで31%が別曜日に月曜日分の振替授業を実施しているとのデータがあります。
半数近い大学が祝日に授業を実施しているのは、非常勤講師の先生方や、学生のスケジュールの確保の問題も絡んでいるためです。
15週から14週になることで、こうした祝日による月曜日分のズレを解消することにもつながります。
終わりに
単位の実質化などが議論となっておりますが、個人的には、それと授業実施回数やコマ時間数は別途と考えてもよい気がしています。100分14週であろうとも、90分15週であろうとも、時間の違いによって教育効果に大きな違いがあるかといえば、個人的には大してないように感じています。
各大学の創意工夫によって、効果的な方法が模索される中、こうした90分15週厳守ルールが、逆に阻害してしまっている印象すらあります。
各大学で、より良い方法を見つけ、実践できるようになっていくといいですね。
なお、具体的な授業実施時間の変更内容については、下記記事でもまとめています。