学校法人の収益事業とは?どこからどこまで?


収益事業には税金がかかる

学校法人にはほとんどの税金が非課税になりますが、収益事業に関しては税金がかかります。

詳細については、下記記事にもまとめていますのでご覧ください。

大学が納める税金は?


では、学校法人における収益事業とは、どのようなものがあるのでしょうか?

私立学校法においても、学校法人の収益事業は認められています。

(収益事業)
第二十六条 学校法人は、その設置する私立学校の教育に支障のない限り、その収益を私立学校の経営に充てるため、収益を目的とする事業を行うことができる。
2 前項の事業の種類は、私立学校審議会又は学校教育法第九十五条に規定する審議会等(以下「私立学校審議会等」という。)の意見を聴いて、所轄庁が定める。所轄庁は、その事業の種類を公告しなければならない。
3 第一項の事業に関する会計は、当該学校法人の設置する私立学校の経営に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。


収益事業の要件

法人税法においては、収益事業は下記のように定義されています。

(定義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
十三 収益事業
 販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。

つまり、法人税法上、学校法人が課税される収益事業には、

①販売業、製造業その他の政令で定める事業
②継続して行われる
③事業所を設けて行われる

の3つの要件があることがわかります。

この3要件を満たす事業には、法人税が課税されることとなります。

販売、製造業その他の政令で定める事業

「販売、製造業その他の政令で定める事業」とはどんなものでしょうか。

法人税法施行令第5条には以下の34業種が規定されています。

第五条 法第二条第十三号(定義)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。
①物品販売業
②不動産販売業
③金銭貸付業
④物品貸付業
⑤不動産貸付業
⑥製造業
⑦通信業(放送業を含む。)
⑧運送業(運送取扱業を含む。)
⑨倉庫業
⑩請負業
⑪印刷業
⑫出版業
⑬写真業
⑭席貸業
⑮旅館業
⑯料理店業その他の飲食店業
⑰周旋業
⑱代理業
⑲仲立業
⑳問屋業
㉑鉱業
㉒土石採取業
㉓浴場業
㉔理容業
㉕美容業
㉖興行業
㉗遊技所業
㉘遊覧所業
㉙医療保健業防接種に係る医療保健業
㉚洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン、自動車操縦若しくは小型船舶の操縦の教授
㉛駐車場業
㉜信用保証業
㉝その有する工業所有権その他の技術に関する権利又は著作権の譲渡又は提供
㉞労働者派遣業
※諸条件がそれぞれあります。

さらに、この中から、学校法人が行うことのできる収益事業は、私立学校法施行規則で下記のように定められ、上記34種からさらに限定されます。

(収益事業の種類)
第一条 私立学校法(以下「法」という。)第二十六条第二項の事業の種類は、文部科学大臣の所轄に属する学校法人については文部科学省告示で定める。

ここで言われている文部科学省告示が下記ページです。

別添3 文部科学大臣の所轄に属する学校法人の行うことのできる収益事業の種類を定める件(平成20年文部科学省告示第141号)(告示):文部科学省


①農業、林業
②漁業
③鉱業、採石業、砂利採取業
④建設業
⑤製造業(「武器製造業」に関するものを除く。)
⑥電気・ガス・熱供給・水道業
⑦情報通信業
⑧運輸業、郵便業
⑨卸売業、小売業
⑩保険業(「保険媒介代理業」及び「保険サービス業」に関するものに限る。)
⑪不動産業(「建物売買業、土地売買業」に関するものを除く。)、物品賃貸業
⑫学術研究、専門・技術サービス業
⑬宿泊業、飲食サービス業(「料亭」、「酒場、ビヤホール」及び「バー、キャバレー、ナイトクラブ」に関するものを除く。)
⑭生活関連サービス業、娯楽業(「遊戯場」に関するものを除く。)
⑮教育、学習支援業
⑯医療、福祉
⑰複合サービス事業
⑱サービス業(他に分類されないもの)

上記18種の収益事業が、学校法人が行える収益事業であるということがわかりました。

これらの業種の事業を継続し、かつ事業所を設けて行っていれば収益事業として扱われるということになります。

さらに、下記のどれにも該当しないものである必要があります。

一  経営が投機的に行われるもの
二  風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条各項(第2項,第3項及び第12項を除く。)に規定する営業及びこれらに類似する方法によって経営されるもの
三  規模が当該学校法人の設置する学校の状態に照らして不適当なもの
四  自己の名義をもって他人に行わせるもの
五  当該学校法人の設置する学校の教育に支障のあるもの
六  その他学校法人としてふさわしくない方法によって経営されるもの

おわりに

この収益事業のほかにも、収益を目的としない、教育研究活動と密接に関連するような不随事業なども学校法人には認められています。

収益事業も不随事業も同様に、寄附行為への記載とともに、文科省の許可が必要になります。

さらに、これらの会計は学校法人会計から区分し、特別の会計(企業会計)として経理する必要がありますし、その事業規模(売り上げや収益)も、かなり限定されています。

学校法人がその資源をもって、一般企業と同様の事業を行えば、かなりの有利性を持つでしょうし、一般企業からしたらたまったものではありません。

そもそも学校法人の主たる事業は教育研究ですから、そうした収益事業にうつつを抜かしてはいけません。

そうした理由からも、学校法人の行う目的外事業については、法的にも限定がされているようです。