基本金とは
学校法人会計特有の概念のひとつとして、「基本金」があります。企業会計上では、「資本金」というものがありますが、内容としては少し異なります。
企業における「資本金」は、株主等からの出資によるもので、株主の財産権となりますが、学校法人における「基本金」は、寄付者からの寄付がその構成要素で、そこに事業活動によって留保された収入を組み入れたもので、寄付者には財産権のようなものはありません。
基本金は、学校法人を安定的・永続的に経営するための財産的な基盤になっており、学校法人会計基準では下記のように定義されています。
(基本金)
第二十九条 学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その事業活動収入のうちから組み入れた金額を基本金とする。
学校法人会計の考え方
通常の企業会計とは概念が異なり、この基本金の制度が、学校法人会計をわかりにくくしている要因のひとつとも言われています。法人としての目的が違うから会計手法も違う、といえばそれまでなのですが、この考え方が、各学校法人が金銭的に黒字なのか赤字なのかを見えづらくしている部分が大いにあります。
学校法人は、自己資金をもって運営していくのが原則・前提であり、その前提となる留保分の財政基盤を確保したうえでの財務基盤を考えるための仕組みになっています。
ですから、どんなに儲かっていても、基本金の組み入れを費用(のような扱い)としてみなすので、財務諸表上は、収支がトントンくらいに見えてしまうといった問題があります。
基本金の種類は4種類
基本金には、第1号基本金~第4号基本金の4種類があり、学校会計基準には下記のように定義されています。第三十条 学校法人は、次に掲げる金額に相当する金額を、基本金に組み入れるものとする。
一 学校法人が設立当初に取得した固定資産(法附則第二条第一項に規定する学校法人以外の私立の学校の設置者にあつては、同条第三項の規定による特別の会計を設けた際に有していた固定資産)で教育の用に供されるものの価額又は新たな学校(専修学校及び各種学校を含む。以下この号及び次号において同じ。)の設置若しくは既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために取得した固定資産の価額
二 学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産の額
三 基金として継続的に保持し、かつ、運用する金銭その他の資産の額
四 恒常的に保持すべき資金として別に文部科学大臣の定める額
第1号基本金は、学校運営のために必要な固定資産の金額。
第2号基本金は、将来の新校舎建設などのための積立のための金額。
第3号基本金は、学生の奨学金などの目的で継続的に保持し運用するための金額。
第4号基本金は、学校運営のために必要な最低限の運転資金で、約1か月のランニングコスト程度の金額。
といったような考え方になります。
基本金の取り崩し
一定の条件下で、保持していた基本金を取り崩すことができます。学校会計基準では、下記のように記載されています。
(基本金の取崩し)
第三十一条 学校法人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該各号に定める額の範囲内で基本金を取り崩すことができる。
一 その諸活動の一部又は全部を廃止した場合 その廃止した諸活動に係る基本金への組入額
二 その経営の合理化により前条第一項第一号に規定する固定資産を有する必要がなくなつた場合 その固定資産の価額
三 前条第一項第二号に規定する金銭その他の資産を将来取得する固定資産の取得に充てる必要がなくなつた場合 その金銭その他の資産の額
四 その他やむを得ない事由がある場合 その事由に係る基本金への組入額
特定活動の廃止や、縮小などや、将来計画の見直しなどの理由への対応としてのものがメインになっているかと考えられます。
なお、4号基本金については、毎年度の計算を行ったうえで、20%以上の減少時にのみ、取崩しの対象となります。(学校法人の規模が減少したものとみなされます)
おわりに
学校法人会計は、企業会計と比べて、まだまだ分かりにくい部分が多いと思います。その中でも、特に特徴的な部分である基本金について、今回はまとめてみました。
私自身、まだまだ理解しきれていない部分も多いので、大まかな説明のみとなってしまいましたが、今後も精進し、わかりやすくまとめていきたいと思います。