単位取得満期退学とは?
博士課程において、必要な単位を修得し、必要な研究指導を受けたうえで、博士論文の審査に合格することなく退学することを、「単位取得満期退学」や「満期退学」、「単位取得後退学」、「単位取得退学」と称されています。博士課程における必要な学修をすべて終えたものの、最後の論文審査にのみ合格できなかった(または論文が完成しなかった)場合に、標準修業年限を超えて在学せずに退学した場合にこうした呼ばれ方をするものです。
文部科学省の用語集においても、下記のように記載されています。
【満期退学/単位取得後退学】
大学院の場合では,大学院の課程の修了要件のうち,当該課程に在学中に,論文の審査及び試験に合格することのみ満たすことが出来ず,当該課程を退学することの呼称として使われることがある。
なお,大学院の博士課程を満期退学又は単位取得後退学後,当該大学院に博士論文を提出し,大学院の博士論文の審査に合格した者は,学位規則第4条第2項に規定する者(いわゆる「論文博士」)として扱うことになる。
制度上・法律上の定めは?
実は、制度上・法律上の定めや根拠はありません。各大学で独自に定めていない限りは、通常の退学となんら変わりはありません。
ただし、教員の資格審査にあたっては、単純な退学よりも有利になることがありますので、こうした書き方を推奨されることもあります。
各大学で単位取得満期退学を定めることに問題は?
すでに定めている大学も多く、それ自体に問題はありません。ですが、この方式自体に問題があるとして議論がされています。
現在,課程の修了に必要な単位は取得したが,標準修業年限内に博士論文を提出せずに退学したことを,「満期退学」又は「単位取得退学」などと呼称し,制度的な裏付けがあるかのような評価をしている例があるが,これは,課程制大学院制度の本来の趣旨にかんがみると適切ではない。また,一部の大学においては,博士課程退学後,一定期間以内に博士の学位を取得した者について,実質的には博士課程における研究成果として評価すべき部分が少なくないとして「課程博士」として取り扱っている例も見受けられる。このような取扱いについては,各大学の判断により,何らかの形で博士課程への在籍関係を保ったまま論文指導を継続して受けられるよう工夫するなど,当該学生に対する研究指導体制を明らかにして,標準修業年限と比べて著しく長期にならない合理的な期間内に学位を授与するよう,円滑な学位授与に努めることが必要である。その際,学生の経済的事情を考慮し,博士論文の提出を目指すために標準修業年限を超えて引き続き在学する学生に対して修学上の負担の軽減措置を講ずることなども併せて検討されることが望まれる。
新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて−答申 第2章−1−1−2
一部の大学においては、慣例により退学後3年以内に論文を提出し合格した者にも課程博士を認めていることもあるようです。
ここで述べられている通り、「留年」の扱いとして、経済的負担を軽減させたうえで、博士論文の指導を継続する仕組みを構築するのも良いかと考えられます。
論文博士って何?
おわりに
元々は、博士の学位が取得しづらい、というところからこうした制度が慣例化されてきているわけですが、近年ではその頃ほどのハードルは無くなってきているように感じます。(専攻にもよりますが)どこかで、「単位取得満期退学は認めない」という通知が出れば別なのでしょうけど、(もちろん開始時期を設ける必要があると思いますが)なかなかこの制度の改善というのも、難しい問題だとおもいます。
博士の学位取得を目指す方におかれましては、こうした事態にならぬよう、頑張っていただきたいです。